国を開いて、エネルギーを考えよう。

クリエーティブ・ビジネス塾36「原発鎖国」(2012.9.18)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、原発ゼロへの疑問
原発に対する世論が揺れています。2030年時点で原子力ゼロと答えた人は43%、「15%」が31%、「20~25%」が19%。ゼロ支持が43%、容認が50%となっています(8/28日経)。そして民主党は、2030年に原発をゼロにする、提言をまとめました(日経9/7)。福島の方々の苦労を考えると、原発はもうごめんだ、と思いが強くなります。しかし原発の問題は、国際的な問題です。私たちは原発ゼロを議論しますが、世界の趨勢は逆です。鎖国状態での思考は間違えたものになります。
まず米国で4基の新規原発の建設計画が承認されました。そして世界では75基の原発が建設中です(8/31日経社説)。うち中国で26基が建設中。なかでも注目しなければいけないのは、パーソナル・コンピューターの創始者の一人である、ビル・ゲイツ原発事業に参入し、極秘裏に中国市場にアプローチしていることです。ビル・ゲイツ原発の全貌はわかりません。まず在来の10分の1以下の小型、そして攻撃されないように地下に建設する・・・画期的に安全な原子炉という噂があります。
中国をはじめ、原発リトアニア、ヨルダン、アルゼンチン、ベトナム・・・新興国で建設されます。建設工事受注のために、東芝、日立、三菱重工業・・・日本企業が世界で戦っています。原発ゼロではやがて日本の技術は世界で信用されなくなります。さらに若い技術者が育たなくなります。日本は世界から取り残され、新しい技術革新について行けなくなります。
2、シーレーン防衛
現在エネルギー供給の30%占める原発を止めたらどうするのか。民主党の計画では、2030年代の早期に再生可能エネルギーを40%にするとしています。再生可能エネルギーとは、太陽光、風力、潮力、地熱発電などです。現在は、1%です。素人考えでは無理だと思いますが、認めましょう。朝日新聞は、ドイツの例をあげ、可能だとしています(朝日9/7)。しかし問題は、その他のエネルギーです。原子力を除く、日本のエネルギーの自給率は4%(ちなみに脱原発のドイツは30%)。火力発電所で使われる石油、LNGガスは、輸入されています。石油の85%は中東からです。
「真面目に『エネルギーの安全保障』を考えるなら、確実に化石燃料を調達できるようjに外交分野に全力を挙げシーレーン防衛を確固たるするものとする」(小林よしのり脱原発論』p.63 小学館)。
小林は過激な『脱原発論』者ですが、石油が安定供給されなければ、脱原発は成し遂げられないとしています。シーレーン(sea-lane)とは、海上輸送路。石油を安全に日本に運ぶための海の道です。現在の日本はすべてあなた任せ、積極的な防衛をしていません。もし脱原発をするなら自衛隊シーレーンを防衛すると戦略とセットでなければならないはずです。そしてもしホルムズ海峡が閉鎖されたら、日本経済は悲鳴をあげ、国民生活は行き詰まる、1970年代の石油危機で日本はそのことを体験しています。
3、国際協力
日本は、竹島で韓国と、尖閣諸島で中国と、北方4島でロシアと対立しています。田中伸男(前国際エネルー機関事務局長)の提案(日経7/10)があります。
まず日本国内で東50ヘルツ、西60ヘルツのカベをなくすこと、国内で融通し合うのです。つぎ韓国と送電線を結ぶ、連係系統を強めるのです。竹島問題で対立するのではなくエネルギー供給で協力するのです。そしてロシア。プーチン大統領北方領土問題に積極的です。日本とロシアを海底ケーブルとパイプラインで結ぶ提案をします。ロシアからエネルギーを買うことで、領土問題で前進できないでしょうか。
さらに中国。第1に原発建設で技術提供をします。東芝ビル・ゲイツ連合に頑張ってもらいます。第2に福島の経験を生かした安全のためのアドバイスします。第3に注目のシェールガスの開発で協力し、中国から天然ガスを買うのです(注:シェールガスとは、深い地底の頁岩(けつがん)から産出する天然ガス。石油に代わる化石燃料として注目されている。可採年数は120年から250年。中国が米国を上回り世界最大の埋蔵国である)。
尖閣諸島でもめている場合ではありません。
東京2020オリンピックまでに、韓国、中国、ロシアとのエネルギーでの国際協力を具体的にスタートさせるが目標です。そして中東への依存率を減らします。「美しい」脱原発の宣言は、国際協力でエネルギーの自給率が上がり安定供給が実現してからで、充分です。