問題はTPPではない。内向きの日本人だ。

コンテンツ・ビジネス塾「TPP」(2011-45) 11/16塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、鎖国
何十年ぶりかに再会したある都立高校の同窓会準備の幹事会での出来事です。「クラス対抗で歌を歌って、優勝チームにシャンパンを贈呈し、パーティーのクライマックスにしよう」。この提案に反対意見が出ました。「そういった順位を決めるようなことはよくない」。予想もしない反対意見でしたが、会議に参加していた、他の数名のクラスメートは沈黙し、その平等主義の見解はその場の空気となり、反論することはできなくなりました。
驚きました。別に日に、小学生の子どもを持つ女性に聞いてみました。「あたりまえよ、運動会で、徒競走、かけっこ、順位を決める競技はやらないのよ」。「学芸会だって、主役はいないのよ。うちの子は主役じゃないの、親からのクレーム。だから、ステージの上には何人もシンデレラがいるの」
まだ驚くべき事実はあります。米国に滞在していて日本に帰国した友人の子息の話です。「日本人の前では、英語の発音を、わざと日本風のカタカナ英語風にする。じゃないといじめられる」。「言いたいことがあっても、自分の意見はなるべく言わないようにする」。「他人の意見にはたとえ反対でも、面と向かってディベート(討論)を挑まない」。日本での生活法は、自分にウソをつくことです。
日本の国際競争力は急激に低下しています。1990年代初頭の世界のトップから、2010年には、58カ国中27位に転落しています。中国、韓国にも追い越されました。若者たちは、海外で働きたくないと思い、海外赴任を命じられても拒否します。米国への留学者数も90年代の半分以下、21290人に減っています。トップは中国の157558人、2位はインド、3位は韓国です。日本人留学生は、3年連続で、2桁の減少率となっています(日経11/15)。日本は衰退しています。半導体、パソコン、液晶テレビ、ケータイ、すべてでアジアの企業に負け続けています。
2、TPP
TPP(Trance-Pacific Partnership=環太平洋経済連携協定)は、関税を撤廃し自由貿易を推進し、経済を発展させ豊かなく暮らしを実現するための、国家・地域間の経済交渉です。環太平洋ですから、太平洋を囲んだ国々が参加しています。はじめはシンガポールニュージーランド、チリ、ブルネイ。次に米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアが。そしてさらに、日本、カナダ、メキシコが参加、世界経済の4割を占める巨大な経済連携になろうとしています。
賛成か、反対か、一番議論を呼んでいるのはコメの農業です。コメには778%の関税がかけられています。関税を撤廃すれば、農業生産は半分以下に減り、食糧の自給率は40%から14%になり、日本の農業は崩壊し、美しい日本の風景も変わる、と主張されています。
1)ウルガイ・ラウンド合意(1993年)では、農村に1年1兆円、6年で6兆円を投じたが、規模拡大も世代交代もできず、66才の高齢化が進んだだけであった(日経10/24)。
2)関税で農業を守るのではなく、大規模化で競争力を高めるべき。農家1戸の耕作面積を2haから20~30haに広げる(米国200ha、英国50ha)。日本のコメは、60kg15000円、米国産6000円、中国産3000円。コストは下げられる(日経11/6)。
3)戸別補償制度(儲からない農産物への補助金)の見直し。保護は大規模農家だけに、もしくは農家ではなく農村に(日経11/12)。
3、世界戦略
世界は経済ブロック化が進んでいます。日米はTPP、ヨーロッパはユーロ圏、そしてロシアはユーラシア同盟。問題は中国です。中国は東アジア共同体を構想しています。
日本は米国とも中国ともつき合う。しかし、サイバースペースと宇宙で覇権狙い、尖閣諸島奪取を国家目標とする国と、運命をともにすることはできません。「日本が生き残ることができるシナリオは、TPPに積極的に参加し、アジア太平洋地域に日米を中核とする経済ブロックを構築する」(佐藤優文芸春秋』12月号 P.439)ことです。
日本人は「内向き、下向き、後ろ向き」(日経11/8)。TPPは、賛成か反対か、以前の問題です。経済も文化も、鎖国はだめ。外に眼を向け、未来を見て、前向きに、進んで行くべきです。