コンテンツ・ビジネス塾「マネーボール」(2011-47) 11/30塾長・大沢達男
1)1週間分の日経が、3分間で読めます。2)営業での話題に困りません。3)学生のみなさんは、就活の武器になります。4)毎週ひとつのキーワードで、知らず知らず実力がつきます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、アメリカ
映画『マネーボール(MONEYBALL)』は、メジャーリーグの弱小球団が、独自の理論のチーム編成で、逆転の優勝を勝ち取るストーリーです。ホラーもサスペンスもないのに、全編はハラハラドキドキ、眠らせてくれません。見るものはシーンごとに決断をし、行動を迫られます。これは日本人への批判の映画です。主張せず、ディベート(討論)を嫌い、決断を先送りする、私たち「平和ぼけ」は、座席から放り出されます。
1)スカウト会議・・・他球団のどの選手を獲得すべきかの会議です。映画を見ている私たちはあたかも、自らが上司にどう評価されいるかのように感じます。あの選手の女の趣味の悪さは、自分に自信がないからだ(だれかのことのようで恐ーい)。
2)GM(ゼネラルマネジャー)・・・球団の編成部門の最高責任者。上にはオーナー、下には監督、板挟みになって、GMは、ノイローゼ気味です(いやだいやだ)。
3)トレード・・・GMは、選手たちにトレード(移籍)を通告しなければなりません。どうやって通告するのだろう。映画では冷静に事実だけを言います(余分な慰めなんかいらないんだ)。
2、マネーボール理論
映画の原作は、『マネー・ボール』(マイケル・ルイス 中山宥訳 武田ランダムハウスジャパン)です。弱小球団を優勝に導いた「マネーボール理論」は、メジャーリーグの野球を根本的に変えました。
1)打率で選手を評価できない・・・問題は、打率ではなく出塁率。安打だけでなく四球も重要だ。さらに長打力を評価すべきだ。打率には四球、長打力は表現されていない。
2)被安打で投手の能力は計れない・・・ヒットを打たれる確率は、一流でも三流投手も変わりない。投手の真の能力は、奪三振、与四球、被本塁打の3要素で計れる。
3)盗塁、犠打は無駄な戦略である・・・アウトを増やす可能性のある攻撃は賢明ではない。犠打は得点の可能性を増やすどころか、逆の効果を高めている。
マネーボール理論は、メジャーリーグ100年の常識をひっくり返し、現実のオークランド・アスレティックスに優勝をもたらしました。しかし、ここで問題にしたいのは、マネーボール理論が正しいか、ではありません。(市場)競争に勝つ、優勝するという目的のために、常識という敵と戦い、目標を達成した強い意志に、いかに学ぶかです。
3、落合博満
日本でマネーボールのGMに似た存在が、中日ドラゴンスの落合監督(今季で退任)です。まず落合は、8年前に中日の監督に就任したときに、現有勢力で一人もクビにせず戦うと宣言し、リーグ優勝を果たします。さらに8年間で、優勝4回、Bクラスなしの成績を残します。そして落合は、勝つために守りの野球を宣言します。1-0で負けたときに、打てなかったからではなく、0点に抑えたら引き分けになっていた、と考えました。事実、投手力を示す防御率は8年で4回リーグのトップを記録していますが、打撃力の打率は2回6位、3回5位という貧打となっています。
監督の仕事は勝利し優勝することです。そのためにはっきりと任務を分担をしました。たとえば先発投手は森コーチの決定事項でした。そして選手には日本一の厳しい練習を課しました。
「平和ぼけ」にならないために、「勝つため」の落合の言葉を紹介します。
1)「孤独に勝てなければ、勝負に勝てない」。あなたは一人で過ごすのが好きだけど、孤独に耐えられない、弱さがありませんか。強くなるには野心を持つことです。
2)「目の前の仕事にベストを尽くしているか」。自分の進路に迷いがありませんか。上司との人間関係に悩まされていませんか。今からしか、次の道は開けません。
3)「好きにやるとは責任をともなう。好き勝手と違う」。自由に振る舞うとは、自分で考え、自分なりに行動することです。仕事に打ち込んでいるか、です(『采配』落合博満 ダイアモンド社)。
そしてもうひとつは、「映画を見なさい」。若い落合は映画青年でした。退任の会見でも、これからは「映画を見る」と答えました。落合は、映画『マネーボール』に、自分を見るはずです。