「異形」を超えた、野球の天使、大谷翔平。

クリエーティブ・ビジネス塾19「野球の天使」(2018.5.7)塾長・大沢達男

「異形」を超えた、野球の天使、大谷翔平

1、ロスアンゼルス エンゼルス オブ アナハイム
"Los Angeles Angels Of Anaheim."「天使」の名のつくおかしな球団名は、ロスアンゼルス(天使)の地名からきています。鮮烈なメジャーデビューを果たした二刀流・大谷翔平は、人類の「異形」の野球選手を飛び越えて、「野球の天使」になろうとしています。天使とは神の使いです。野球の神様と呼ばれた名選手はいましたが、「野球の天使」は大谷翔平が初めてです。
あなたは、4月8日のアスレチックス戦での大谷翔平のピッチングを見ましたか。
7回1死まで、完全試合をやっていました。球場は静まり返っていました。何かが起きる。観客は凍りつき、声も出せないようになっていました。しかし奇跡は起こりませんでした。1死から完璧なヒットを打たれました。エンゼルスファンはどうしたと思いますか。立ち上がって拍手をし始めたのです。味方のピッチャーがヒットを打たれたのに。大谷翔平が「野球の天使」であることを確認できたからです。
あなたは、4月12日のロイヤルズ戦での走者一掃の3塁打を見ましたか。
ダイアモンドを駆け巡った大谷翔平の見事なランニングフォームを、そして速い。ジャーナリズムは、大谷よ、君は足も速いのか。驚きました。なぜ美しく速いのか。それは大谷翔平が「野球の天使」だからです。
あなたは、4月27日のヤンキース戦でセベリーノ投手から打った大谷翔平のホームランを見ましたか。
セベリーノとは2017年シーズンに230個の三振を奪い、14勝をあげた、ヤンキースのエースです。打った球は内角のフォーシーム156km、大谷翔平はクルッと身体を回転させるフォームで豪速球をとらえ、スタンドに放り込みました。内角球を打つ技術はない、と言われていました。だけど、打ちました。セベリーノはもう内角には投げないと言いました。それは大谷翔平が「野球の天使」だからです。
2、栗山監督
大谷翔平に二刀流をすすめたのは、日本ハムの栗山監督です。
大谷は、高校からメジャーリーグに挑戦することを考え、その意志を表明していました。ですからドラフト会議でどの球団も指名しませんでした。日本ハムだけが指名しました。そして栗山監督は「二刀流」のプレゼンテーションを大谷翔平にしました。大谷は心を動かされました。そして当初の意志をひるがえし、日本ハムに入団しました。なぜ栗山監督は大谷翔平の才能を見抜いたか。
ピッチャーとして才能は、高校時代に練習試合で外角低めへの見たこともない角度のあるストレート見たときに確信。そしてバッティングに関しては、イチローの飛距離を延ばしたもの、という評価です。素早いスイングとバットコントロール、まさしくその通りです。
栗山監督は、さらに「三刀流」夢を語ります。野手としても大谷は使える、というのです。ショートを守り、バッティングをし、さらにピッチングではクローザーとしてマウンドに上がる。まるで高校野球です。ショートで華麗なフィールディングをする大谷翔平も見たいものです。
3、さらなる夢
「骨端線損傷」。大谷翔平は、骨が急速に伸びるとき起こるケガを、高2のときにしています。ハードなトレーニングは禁止されていました。そして医師は、身体ができあがるのは23〜25歳と予想しました。
大谷翔平はまだ成長しています。「野球の天使」にはどんな未来が待っているのでしょうか。
レフトへ軽くあてたホームラン、バークスクリーンを越えていくホームラン、片手で野手の頭を越すヒット。夢のバッティングはいろいろありますが、やはりピッチングです。まだまだまっすぐが不満です。
あわや完全試合のときは、真っすぐで三振が取れていました。あれです。落ちる球はいつか打たれます。真っすぐという変化球は無敵です。それこそが野球の快感。見応えがあります。
「個人的な大谷ファンとして、デビュー戦でのストレート4割、変化球6割という割合を逆にしてほしい。やはりまっすぐで三振を取るというのが見ていていちばん楽しいんです。わかりやすく言えば、チャップマン(史上最速169kmの記録を持つヤンキースの左腕)みたいな選手が先発し、長いイニングを投げる。」(『ナンバー 4/26』p.22 吉井理人)。その通り!「野球の天使」には、バットにあてられないまっすぐが必要です。
しかし野球での個人記録は所詮空しい。野球はドラマ。逆転ホームランで、完封劇で、エンゼルスの常勝伝説を作って欲しい。東海岸ヤンキースに負けない西海岸のエンゼルスに。そのとき大谷翔平は、天使たちの中の天使(The Angel of Angels)になり、永遠になります。