アベノミックスで、自分ができることって、何でしょう。


クリエーティブ・ビジネス塾48「アベノミックス」(2013.12.19)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、○
いよいよ失われた20年と、1998年から15年続いたデフレから、アベノミックスによる脱出が始まりました。アベノミックスは3本の矢で構成されています。第1の矢はインフレ目標の採用と大胆な「金融緩和」、第2の矢は「財政支出」増によるデフレ脱却、第3の矢は生産性の向上と女性・高齢者の労働参加による「成長戦略」です。
まずアベノミックスは、日本国民の表情を不景気なデフレ顔から好景気のインフレ顔に、朗らかにしました。安部首相が招致した7年後の2020東京のオリンピックに向けて期待を膨らませています。日本経済に明るいきざしをもたらしました。
つぎにアベノミックスは、第1の矢で円安・株高にし輸出関連企業の業績を改善し、第2の矢で景気を刺激し中期的な財政再建のもつなげました(伊藤隆敏東大教授 日経12/2)。
さらにアベノミックスは、海外での日本経済の評価を高めました。大恐慌研究の権威である米国クリスティーナ・ローマ教授(UCB)は、アベノミックスによる日銀の政策変更を、米国FRB連邦準備制度理事会)よりも鮮やかだった、と評価しました(若田部昌澄早大教授 文芸春秋2014.1)。
2、×
アベノミックスにも問題点があります。まず第3の矢、成長戦略はまだ放たれていない、と前出の伊藤教授は指摘します。たとえば農業。減反の農政は計画経済の発想、ブランド米やプレミアム牛乳で生産拡大し輸出促進、生産性向上の方向で「日本再興戦略」を実現しなければなりません(伊藤 前掲日経)。マーケットはまだ動いていません。
つぎはデフレマインド。小売り売上高は昨年比でまだ増えていません。モノは動いていません。さらに下請け企業はアベノミックスの恩恵はないと言っています。円安で原燃料費は上がっているのに納入価格を上げることは許されていません(藻谷浩介・日本総研首席研究員 前掲文芸春秋)。犯人はわかっています。買い控えや買い叩きはデフレマインドが日本中に蔓延している悪影響です。
さらに成長戦略の混乱は経済政策哲学の混在によるものです。政府の補助金や減税で特定の産業を育てるのか(旧通産省的)、規制緩和や民営化で市場を育てるのか、です。答は勿論、市場を育てることです(前出若田部)。日本でドイツ車が売れているのはブランド力を高めた結果です。コンビニは中高年のニーズを捉える努力をしています(前出藻谷)。
3、2014
アベノミックスの滑り出しは好調です。真価が問われるのは来年、2014年です。
規制緩和選択と集中、生産性の向上による成長戦略の実行が望まれます。補助金による成長戦略ではだめです(前出伊藤)。また14年は成長率の減速は「やむを得ない」「我慢すべきもの」かもしれません(小峰隆夫法大教授 前出文芸春秋)。なぜなら、消費税増税があり、これ以上公共投資を増やせないからです。
アベノミックスの最大の問題は財政健全化の「出口戦略」です。日本の公的債務は約1千兆円、GDP比で224%、米国や英国の2倍です。公的債務の膨張を防ぐには、消費税を増やし、社会保障を減らす必要があります。もし財政健全化が目処(メド)がつかないと、金融政策は出口に向かうことができず、金利高騰やインフレ高進のリスクが待っています(池尾和人慶大教授 日経12/4)。
アベノミックスは2012年の11月14日、野田佳彦首相の衆院解散予告から始まっています。選挙戦のときからマーケットは反応しました。
民主党政権の「成長より幸福」、「企業より生活」、「反公共事業」、「官僚主導から政治主導へ」の政策は撤回されました。政策は、自民党政権の「成長志向」、「企業志向」、「公共投資増加志向」、「企業と官僚にフレンドリー」に変わりました。
日本人の表情は明るくなりましたが、私たちにも問題がつきつけられてます。まず景気回復までの道のりは遠い。つぎに財政再建は政府の仕事。そして市場の主役こそが私たち。課せられた仕事は「働く」ことです。顧客を創造し市場を生み出すため、働くことです。