LEVIS501の曲がり角。

クリエーティブ・ビジネス塾12「LEVIS」(2013.3.26)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、ジーンズの誕生
いまではあたりまえですが、かつては突飛なことがありました。いまでは常識だけど、昔は異常な流行がありました。ジーンズ・ファションもそうです。いまでは、だれもがGパンを愛用していますが、ジーンズはアメリカ発の世界を驚かすファッションでした。
1848年にカリフォルニアのサクラメントで砂金が発見されます。ゴールドラッシュのニュースでアメリカの東部から、たくさんの人が西部にやってきます。「49ers(フォーティーナイナーズ=49年組」と呼ばれる人たちです。彼らは、川に入り砂金を取り、泥だらけになりズボンを台無しにしていました。それを見ていたリーバイ・ストラウスが、幌馬車のキャンバス地で作業用の強いズボンを作ります。そしてリベット(鋲)でポケットを補強したパンツを縫製し、1873年に特許を取ります(1890年に特許は切れる)。ジーンズファッションの誕生です。その後、使われる生地はデニムに変更され、1880年の「LEVIS501」新発売になります。そうして、ジーンズは西海岸に住むアメリカ人の作業着、普段着になっていきます。
2、ジーンズの反抗
1)不良・・・戦争が終わった1950年代、ジーンズは不良のファッションとして登場します。映画スター、マーロンブランドはジーンズに革ジャンでオートバイに乗って映画『乱暴者』に出演しました。ジーンズ姿のジェイムス・ディーンは、映画『理由なき反抗』で父親を絞め殺そうとします。ジーンズは、暴力と非行を繰り返す、不良たちのユニフォームになりました。
2)ロック・ミュージック・・・1968年にウッドストックで30万の人を集めてロックイベントが開かれます。ジーンズは、長髪、Tシャツ、スニーカーとともにロックジェネレーションのファッションになります。ジーンズはロックと同じようにアメリカから世界に輸出され、世界の若者の言葉になります。1960年代には日本でもジーンズメーカーが誕生します。
3)ヒッピー・・・やがてジーンズは、世の中に異議を申し立てる反抗のシンボルになり、社会変革を試みる若者のファッションになります。「セックス、ドラッグ、ロックンロール」、「テイクイットイージー」、「ラブ&ピース」がスローガンです。日本では、広告会社、放送会社、音楽会社のクリーターたちが、ジーンズで出勤し、仕事をするようになります。
3、ジーンズ「へ」の反抗
リーバイスは2月22日の日経に見開き全面広告を掲載しました。キャッチコピーは「ジーンズ生誕140年、501が変わる」です。ビジュアルには5本のジーンズが登場し、「1890 THE FIRST,1944 THE WARTIME,1947 THE REBEL,1966 THE ROCK&ROLL,2013 SAME AS ALWAYS , LIKE NEVER BEFORE(1890年最初のジーンズ、1944年戦時中のジーンズ、1947年反抗のジーンズ、1966年ロックミュージックのジーンズ、2013年まえと違うけどいつものジーンズ)」と、書いてあります。
1890年は501が登場した年ですが、ほかの年号はアバウトと考えていいと思います。2013年のところだけには上半裸でバスタブに立つ男が、赤のジーンズをはき、前屈みになりほかの色をチェックしています。男の髪の長さはほぼ坊主、全身にタットゥーを入れています。リーバイスは、この男が現代のファッションを革新する、と主張しているかのようです。
かつて砂金取りの男が西部を開拓し、不良たちがアメリカを停滞から救い、ロックミュージックが世界をひとつにしたように、ヒッピーがiPhoneジョブズを生んだように、タットゥーの男は何をしてくれるのでしょうか。彼はゲイですか。オタクですか。カッコいーですか。ヤバいですか。501ジーンズは新しい価値観で世の中を革新してくれるでしょうか。
ジーンズより、ミディのスカートの方が攻撃的ではないでしょうか。ジーンズより、細身のスーツとパンツの方がスタイリッシュではないでしょうか。
ジーンズは、いまや突飛でも異常でもなく、古くさい常識になっています。ここ一番のデートで誰がジーンズを選ぶでしょうか。ジーンズはいま曲がり角に来ています。