牛丼には白ワインがたっぷり。だから吉野家うましい。

クリエーティブ・ビジネス塾16「吉野家」(2013.5.9)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、280円
4月18日、吉野家が牛丼並盛りの値段を380円から100円下げ、280円にしました。
なぜ値下げができたのか。規制緩和で米国産牛肉が安く輸入できるようになったからです。BSE(牛海綿状脳症)問題の発生で、いままで米国産牛肉の輸入対象の月齢は「20ヶ月以下」でしたが、「30ヶ月以下」に広がりました。吉野家は牛丼用の牛肉に米国産を使っています。これで調達量は拡大し、調達価格が下落するからです。
吉野家は「吉野家史上最高のうまさへ。」というキャッチコピーで、日経に全15段広告を掲載しました(日経4/18)。そのなかで「私たちは、牧草と穀物によって豊かに育てられ、赤身と脂身のバランスに優れた米国産牛肉(中略)。この中でも、月齢18ヶ月から24ヶ月までの程よく脂がのった、やわらかなものが牛丼にとって最適なものだ」と説明しています。牛丼はむずかしい。
1)日本の代表的な牛は、黒毛和種(くろげわしゅ)。松坂牛が有名、牛にビールを飲ませ、マッサージ、赤身の中に脂のうまみがほどよくはいった「霜降り」が絶品です。アメリカ、オーストラリアの牛は、黒毛のアンガス種、茶色のヘレフォード種が代表です。
2)アメリカ産とオーストラリア産はエサが違う。アメリカ産は赤ちゃんの頃は牧草、1年経つとトウモロコシなどの穀物。脂肪分が多く肉質がなめらか。オーストラリア産はずっと牧草。脂肪分が少なくヘルシーな赤身(日経4/13)。吉野家アメリカ産にこだわっています。
2、吉野家
吉野家は1899年(明治32年)、当時日本橋にあった魚市場で創業しています。そして1926年魚河岸の移転に伴い、築地に移ります。「吉野家」の名前は、創業者・松田栄吉の出身地、大阪・吉野(現福島区)の地名からです。
魚河岸でわかるように、吉野家は仕事に忙しい「食のプロ」のための食堂としてオープンしています。「うまい、安い、早い」はそこからきています。
客は味にうるさい。だから「マイ・オーダー」がある。タレたっぷりの「つゆだく」、逆に控えめにした「つゆ抜き」、肉だけを大盛りにした「あたまの大盛り」、肉の脂身を抜いた「トロ抜き」、お客さまにあわせた無数の牛丼がありました。チェーンになるのは1970年ごろからです。
さて味の秘密。吉野家で消費量が多いのは、肉、米、ワイン、醤油、玉ねぎ、生姜。アメリカ産牛肉もありますが、決めては白ワイン。ちょっと気がつきませんでした。知ってましたか。吉野家は白ワインの最大の消費者です(『吉野家の経済学』p.98 伊藤元重 安部修仁)。
つぎに盛りつけ。鍋の肉をお玉ですくって、ごはんの入った丼に一発で盛りつける。
時間がかかるとタレが抜けすぎる。お玉の穴の大きさと数は一定のリズムでやった時に一定のタレの量になるように計算して決められている。マスターするまでの最低3週間。一人前になるには半年かかります(前掲p.137)。
順風満帆のような吉野家も、1980年に倒産(会社更生法の適用)しています。なぜ倒産したか。フリーズドライ製法の乾燥牛肉、冷凍のお新香、粉末のタレ。味がまずくなるような合理化ばかりしました。吉野家は批判されます。単品だからダメなんだ。牛丼はダサい。女の子が利用できるようにファッショナブルでない。しかし創業者松田のDNAをひいたスタッフたちが血みどろの戦いをし、1987年に債務を完済し復活します。基本に返ったのです。
3、がんばれ牛丼
吉野家(国内1192店、海外604店)は、牛丼のナンバーワンではありません。国内最大は、1856店舗の「すき家」。3位が松屋の国内1000店。松屋すき家も社長は吉野家で学んでいます。
吉野家は4月の売り上げが、前年同月比で11.1%増加したと発表しました。客数は13.6%増と16ヶ月ぶりにプラスに転じました(日経5/8)。
吉野家が元気にならないと。すき家松屋も、そして日本も元気になりません。牛丼は忙しく働く者の食べ物です。クールジャパン(カッコいい日本)で、粋に仕事をする、日本の元気の素です。


クリエーティブ・ビジネス塾16「吉野家」(2013.5.9)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、280円
4月18日、吉野家が牛丼並盛りの値段を380円から100円下げ、280円にしました。
なぜ値下げができたのか。規制緩和で米国産牛肉が安く輸入できるようになったからです。BSE(牛海綿状脳症)問題の発生で、いままで米国産牛肉の輸入対象の月齢は「20ヶ月以下」でしたが、「30ヶ月以下」に広がりました。吉野家は牛丼用の牛肉に米国産を使っています。これで調達量は拡大し、調達価格が下落するからです。
吉野家は「吉野家史上最高のうまさへ。」というキャッチコピーで、日経に全15段広告を掲載しました(日経4/18)。そのなかで「私たちは、牧草と穀物によって豊かに育てられ、赤身と脂身のバランスに優れた米国産牛肉(中略)。この中でも、月齢18ヶ月から24ヶ月までの程よく脂がのった、やわらかなものが牛丼にとって最適なものだ」と説明しています。牛丼はむずかしい。
1)日本の代表的な牛は、黒毛和種(くろげわしゅ)。松坂牛が有名、牛にビールを飲ませ、マッサージ、赤身の中に脂のうまみがほどよくはいった「霜降り」が絶品です。アメリカ、オーストラリアの牛は、黒毛のアンガス種、茶色のヘレフォード種が代表です。
2)アメリカ産とオーストラリア産はエサが違う。アメリカ産は赤ちゃんの頃は牧草、1年経つとトウモロコシなどの穀物。脂肪分が多く肉質がなめらか。オーストラリア産はずっと牧草。脂肪分が少なくヘルシーな赤身(日経4/13)。吉野家アメリカ産にこだわっています。
2、吉野家
吉野家は1899年(明治32年)、当時日本橋にあった魚市場で創業しています。そして1926年魚河岸の移転に伴い、築地に移ります。「吉野家」の名前は、創業者・松田栄吉の出身地、大阪・吉野(現福島区)の地名からです。
魚河岸でわかるように、吉野家は仕事に忙しい「食のプロ」のための食堂としてオープンしています。「うまい、安い、早い」はそこからきています。
客は味にうるさい。だから「マイ・オーダー」がある。タレたっぷりの「つゆだく」、逆に控えめにした「つゆ抜き」、肉だけを大盛りにした「あたまの大盛り」、肉の脂身を抜いた「トロ抜き」、お客さまにあわせた無数の牛丼がありました。チェーンになるのは1970年ごろからです。
さて味の秘密。吉野家で消費量が多いのは、肉、米、ワイン、醤油、玉ねぎ、生姜。アメリカ産牛肉もありますが、決めては白ワイン。ちょっと気がつきませんでした。知ってましたか。吉野家は白ワインの最大の消費者です(『吉野家の経済学』p.98 伊藤元重 安部修仁)。
つぎに盛りつけ。鍋の肉をお玉ですくって、ごはんの入った丼に一発で盛りつける。
時間がかかるとタレが抜けすぎる。お玉の穴の大きさと数は一定のリズムでやった時に一定のタレの量になるように計算して決められている。マスターするまでの最低3週間。一人前になるには半年かかります(前掲p.137)。
順風満帆のような吉野家も、1980年に倒産(会社更生法の適用)しています。なぜ倒産したか。フリーズドライ製法の乾燥牛肉、冷凍のお新香、粉末のタレ。味がまずくなるような合理化ばかりしました。吉野家は批判されます。単品だからダメなんだ。牛丼はダサい。女の子が利用できるようにファッショナブルでない。しかし創業者松田のDNAをひいたスタッフたちが血みどろの戦いをし、1987年に債務を完済し復活します。基本に返ったのです。
3、がんばれ牛丼
吉野家(国内1192店、海外604店)は、牛丼のナンバーワンではありません。国内最大は、1856店舗の「すき家」。3位が松屋の国内1000店。松屋すき家も社長は吉野家で学んでいます。
吉野家は4月の売り上げが、前年同月比で11.1%増加したと発表しました。客数は13.6%増と16ヶ月ぶりにプラスに転じました(日経5/8)。
吉野家が元気にならないと。すき家松屋も、そして日本も元気になりません。牛丼は忙しく働く者の食べ物です。クールジャパン(カッコいい日本)で、粋に仕事をする、日本の元気の素です。