ラファエロは絵画のモーツアルトです。

クリエーティブ・ビジネス塾17「ラファエロ」(2013.5.16)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、古典
あなたは教養を磨いていますか。教養とは古典を学ぶことです。なぜ古典を学ぶのか。未来を創造するためにです。文学、音楽、絵画、彫刻、建築・・・それぞれ膨大な古典がありますが、ジグゾーパスルを完成させていくように、ひとつひとつのピースを学び、長い時間をかけて全体像をつかむ努力が必要とされます。教養のための学びは終わりのない旅です。
きょうはルネッサンスの画家、ラファエロ(1483~1520)を取り上げます。関心を持ったら上野の国立西洋美術館で開かれている、日本初の「ラファエロ展」に行ってください。なーに!これー?訪れている観客の多さに驚きます。ラファエロはそれほど人気のある画家です。
2、ラファエロ
ラファエロルネサンスの3大画家の一人です。
まず『モナリザ』のレオナルド・ダ・ヴィンチ(1452~1519)。ダ・ヴィンチは人体解剖図やヘリコプターの設計も手掛けた科学と芸術の天才です。次は『ダヴィデ像』のミケランジェロ(1475~1564)。ミケランジェロはローマ・システィーナ礼拝堂の天井画を完成させた彫刻と絵画の巨匠です。そしてラファエロには、マリアとキリストを描いた『大公の聖母』、そしてバチカンの「署名の間」に描いた『アテナイの学堂』があります。
ルネッサンスの勉強にはどのピースも重要ですが、ラファエロというピースを愛すべきものです。ダ・ヴィンチミケランジェロと違い、37歳という若さで亡くなっています。それは古典音楽の御三家、バッハ、モーツアルト、ベートーベンのうち、モーツアルト(1756~1791)だけが35歳の若さで亡くなっているのを思い出させます。
ラファエロモーツアルト。時代は300年近くも違い、ジャンルも絵画と音楽と別ですが、仕事は似ています。それはともに、神がこの世に送った芸術家である、ことです。
マンガ『テルマエ・ロマエ』を描いたヤマザキ・マリの証言があります。「フィレンツェに留学中に何度もラファエロの絵の現物を見たが、ラファエロの絵は一発勝負で描かれている。当時のフレスコ画は線を間違えたら削り取らなければならなかった。その形跡がない。ラファエロは画家として恐るべきテクニックを持っていた」(NHK Eテレ日曜美術館』5.12)。
さらにこれが重要ですが、ラファエロは人物を描いていますが、具体的な人間を描いていません。『大公の聖母』を見てください。私は西洋美術館の本物の絵の前で、観客の迷惑を顧みず、5分間ほど立ち尽くしていました。そこに描かれているのは人間ではありません。神です。
モーツアルトも同じです。まず楽譜は訂正されたり推敲されたりしていません。さらに生まれている音楽は人間の音楽ではありません。神のみが書く純粋な音がならんだ音楽です。
ラファエロの絵画を評して、構図が、肖像が、肉体が、物語がステージがすごい、宗教絵画に革命を起こした、さまざまに議論されます。でもそうした人々の言葉一切無用です。ラファエロは、たとえ人間を素材にしても、人間を超えた純粋な存在を描いています。
3、ホテル・ラファエロ
イタリアの地図を広げてください。ラファエロは、長靴の付け根、ふくらはぎ側、サンマリノのすぐ下のウルビーノという所で生まれています。10代の後半ではウルビーノの西にあるフィレンツェで仕事をします。さらに26歳でバチカンの依頼を受け、ローマで活躍しています。その頃のラファエロは50人程の弟子(仕事仲間)かかえラファエロ社(工房システム)で仕事をしていました。
ラファエロだけでなくルネサンスを知るにはイタリア旅行が必須になります。そしてもうひとつ行くべき所があります。パリの「ホテル・ラファエロ」です。
この古いホテルは冷房設備がないホテルです。でもヨーロッパの映画人が愛用し、あの音楽と映画のプレイボーイ、ゲンズブール(1928~91)も定宿にしました。しかしご利用の節は、くれぐれも"R"の発音にご注意を。"Raphael"です。うっかり"L"で発音すると、"Lafayette"(ラファイエット・ホテル)に連れて行かれしまいます(笑い)。旅もまた、あなたの教養に必要です。