『永遠の0』と百田尚樹を支持します。

クリエーティブ・ビジネス塾2「永遠の0」(2014.1.8)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、特攻
カミカゼ」と米軍に怖れられた旧日本軍の特攻(とっこう=特別攻撃隊)を知っていますか。ゼロ戦を知っていますか。特攻に使われた世界最強の旧日本軍の戦闘機です。特攻とは爆弾を抱えたゼロ戦で米軍の戦艦に体当り攻撃をすること。パイロットは生きて帰れぬ狂気の作戦です。
映画『永遠の0(ゼロ)』は、特攻で死んでいったひとりの男の物語で、涙に溢れ、心が洗われる感動の物語です。驚くのは、この映画が正月映画としてヒットしたのみならず、原作の小説『永遠の0』(百田尚樹 講談社文庫)も空前のロングセラーになっていることです。
映画の主人公で、特攻を志願したゼロ戦パイロット宮部久蔵(みやべきゅうぞう)は、妻と幼い娘を残し、26歳で一生を終えます。その娘が生んだ娘と息子、つまり宮部の孫娘と孫息子がのふたりが祖父の物語を発見しようということで、映画は始まります。
かつての戦友たちは90歳前後、取材は困難を極めます。でも宮部久蔵についてわかってくることは意外でした。「奴は臆病者だった」「命を惜しむ男だった」「戦場で逃げ回っていた」ふたりは落胆します。ところが、取材を続けているうちに違う事実が明らかになってきます。宮部久蔵は、抜群の技量を持つゼロ戦パイロットであった。さらにパイロットを育成する優れた教官であったこのともわかってきます。しかし彼は全く変わった日本軍の兵士でした。「妻のために死にたくない」「娘に会うために何としても死にたくない」。宮部久蔵は家族を思い、家族を守ろうとしました。そして教官としても若者たちに「死ぬな」と教えました。「生き延びよ」「君たちには生きて帰りやることがある」特攻への出撃を1日でも遅くしようとします。宮部は祖国を信じ、祖国の未来に賭けていました。「死んでも、帰る。生まれ変わって、帰る」宮部は妻と娘に約束します。
2、右翼
「右翼」という困った言葉があります。右翼とは、戦争主義者、天皇賛美者、保守・反動主義者、もっと簡単に<悪者>を意味します。もともとの意味はフランス革命後の議会で右翼に座っていた人々をさす言葉で、保守的な立場をとる人、論理だけでなく情念も判断の材料にしようと考える人々です。左翼はすべてを論理で判断しようとする人々です。
日本で使われる右翼とは、批判や非難の言葉です。右翼を批判する人々は、平和主義者、民主主義者、自由主義者リベラリスト)で、自らを善良で良識の人だと思っている人たちです。
「右翼」が困った言葉だというのは、戦前の教育を評価したり、憲法改正をいうと右翼、太平洋戦争のかわりに大東亜戦争というと右翼、さらに軍人を賛美したり、靖国神社を口にすると右翼と名指しされ、議論が一歩も前に進まなくなってしまうことです。
宮部久蔵の物語の感動した小説の読者、映画の観客は、右翼の集まりでしょうか。安部首相は、靖国神社に参拝し、『永遠の0』を大みそかの日にご覧になっています。安部首相は右翼でしょうか。
3、新聞
永遠の0』は、いまや流行作家になった百田尚樹にデビュー作です。小説も映画も素晴らしい。映画は小説の読者を裏切らずに映像化に成功しました。脚本そして恐るべきVFX(CG映像)の勝利、山崎貴監督の傑作です。
ただひとつだけ、原作にあり映画にないプロット(筋書き)が、あります。それは新聞批判です。まずそもそも日本に戦争に引きずり込んだのは新聞であるという批判です。日露戦争後の講和を軟弱だと新聞が怒り、国民を戦争賛美に走らせ、5.15事件、2.26事件につなげ、軍部を化け物にしていった(『永遠の0』p.424~425 百田尚樹 講談社文庫)。そしてその同じ新聞が戦後になりGHQ(占領軍本部)の意のままに、平和主義と民主主義の論陣を張るようになった(同 p.430)。さらには、戦前の軍人は狂信的な天皇主義者で特攻推進者であったとういう報道に対する批判です(ここはすこし映画でも描かれる)。
永遠の0』を読むこと、観ること、『永遠の0』に涙すること、感動することは、右翼ではありません。上から目線で、民主主義を説く一部の新聞こそが、時代錯誤です。日本は大きく変わります。