ビットコインって何ですか?通貨の曲がり角ですか?

クリエーティブ・ビジネス塾10「ビットコイン」(2014.3.5)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。

1、マウントゴックス
インターネット上の仮想通貨「ビットコイン」の交換取引所「マウントゴックス」が2月26日未明、取引全面停止を表明しました。マウントゴックスはビットコインと米ドルや日本円などの交換取引所です。100万超の口座数があり、米欧中心の利用者がいます。この取引停止で円換算で300億円超の資産が宙に浮いたことになりました。
さらに「マウントゴックス」は、それから2日後の2月28日、東京地裁民事再生法の適用を申請し、受理されたと発表しました。マウントゴックスのマルク・カルプレス社長は、「ビットコインがなくなってしまった」と謝罪しました。消失したのは85万ビットコインで、金額にして110億円程度ですが、日経は1ビットコイン=550ドルの計算で、消失は470億円になると報道しました(日経3/1)。
2、ビットコイン
ビットコインはネット上の仮想通貨で、2009年に誕生しました。発行額は一時、円換算で1兆円を超えました。普通のお金を違い、実物はなく、ネット上のデータとして存在しています。買い物や海外送金に便利で、クレジットカードや銀行送金のように手数料がかかりません。ネット取引の利便性が高く、バーナンキ前米連邦準備理事会(FRB)議長が通貨として「有望だ」と語ったほどです。
つぎに、ビットコインに発行主体はありません。政府や中央銀行の裏付けがありません。ということは、逆に国や中央銀行の政策の影響を受けません。放漫財政や金融緩和で価値が薄れるリスクがありません。実際に昨年のキプロス通貨危機では資金の逃亡先としてビットコインが注目されました。国境を越えた資金取引が厳しく規制されている中国でも、抜け道としてビットコインが流行しました。
そして、デメリット。法律に基づく監視がないために、麻薬、武器などの違法取引や資金洗浄マネーロンダリング)に使われやすい。さらに円やドルとの交換レートの変動が大きいことがあります。
3、暗号技術
ビットコインは、「サトシ・ナカモト」の論文に基づくプログラムで管理されています(ロス近郊在住のサトシ・ナカモトはビットコインとの関係を否定、日経3/8。ナカモトが何者か不明のまま)。
第1に、ビットコインは偽造が不可能なコンピュータ科学のアルゴリズム(演算手続きを支持する規則)によって成立しました。
第2に、ビットコインには銀行や取引所がありません。ビットコイン財布というソフトウエアを使いビットコイン保有し、相手のコンピュータの「ビットコインアドレス」(財布)にデータを直接送る、P2P(ピア・ツー・ピア)の取引です。ビットコインはPCのハードディスク内に置けます。ハードディスクがクラッシュしたらビットコインは失われます。ウィルスなどで個人のPCからビットコインが盗まれることもあります。
第3に、ビットコインの保管法にはいろいろあります。「ホットウォレット」はPC上の保管。「コールドウォレット」はUSBメモリーに記録し金庫に。「ペーパーウォレット」はメモリーを紙に印刷したものです。
ビットコインと通貨の交換取引所は日本、カナダ、香港・・・30カ所以上あります。民間の営利会社で、マウントゴックスもそのひとつです。ビットコインをマウントゴックスに預けるのは彼らにあげてしまうのと同じで、「預けている」のではない。???。そして現在の問題が起こりました(日本デジタルマネー協会 フェロー大石哲之のサイトでの解説より)。
結論。ビットコインの中核になる暗号技術はブラックボックスです。「ビットコインがなくなる」とは、どういうことなのかわかりません。セキュリティを保証する難解なアルゴリズムは闇の中にあります。
日本政府は、1)ビットコインを通貨ではなく「モノ」として扱う、2)銀行、証券会社での取り扱いを禁じる、3)売買には消費税、収益には課税する(不可能では?)、方針を固めました(日経3/5)。
貨幣は価値尺度、流通手段、価値所蔵の3つの機能を持つものです。貨幣は貝殻、獣皮、農産物、金、銀、そして現在の国家や地域が発行する信用紙幣へと変遷してきました。私たちは歴史の大きな変化の曲がり角に立っています。