クリエーティブ・ビジネス塾31「ドイツ」(2015.7.29)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、ギリシャ
オリンピックのふるさとギリシャの危機がひとまず回避されました。ギリシャは欧州連合(EU)から離脱し、経済と財政が破綻し、政治と社会が混乱状態になる寸前にありました。危機は回避されました。7月16日、欧州連合(EU)と欧州中央銀行(ECB)がギリシャ支援に動き出すことを決定しました(日経7/17)。
ギリシャ危機の責任はもちろんギリシャにあります。ギリシャは01年にユーロ圏加盟を承認されていますが、そのときに財政統計をねつ造する協定違反を犯しています(日経7/29「ギリシャ債務削減検討を」大村敬一早大教授)。10年以上前からギリシャの債務超過は深刻でした。
しかしダメなギリシャ以上に、今回の騒動を通じて明らかになったのは、ドイツの一人勝ち状態でした。そもそも欧州連合(EU)と通貨統合のユーロは、ドイツ問題を解決しヨーロッパに平和と安定をもたらすために、始められたものです。ドイツ問題とは二度も大戦の主役になり世界を混乱に陥れたドイツのことです。
2、戦争
第1次世界大戦は、1914年にオーストラリア=ハンガリー帝国皇位継承者であるフランツ・フェルディナンド大公夫妻が銃撃されるサラエボ事件から、始まります。ドイツ、オーストリア、オスマン帝国、ブルガリアの中央同盟国VS連合国、イギリス、フランス、ロシアそして日本、イタリア、米国です。1917年ロシア革命、1918年トルコ、オーストリアで革命。ドイツのウイルヘルム2世の退位で、大戦は終わります。1000万人の戦死者、2000万人の戦傷者を出しています。
第2次世界大戦は、1939年のドイツ軍のポーランド侵攻から始まります。ドイツ、日本、イタリアの枢軸国VSイギリス、フランス、ソ連、米国、中華民国の連合国。1940年ダンケルク戦いで、連合国はヨーロッパから追い出されます。1941年ドイツ軍はソ連に侵攻、日本が米英に宣戦を布告。1942年日本はミッドウェイで敗北、1943年ドイツはスターリングラード、北アフリカで敗北。イタリア降参。日本はガダルカナルで敗北。1944年連合国はノルマンディ作戦成功再びヨーロッパへ上陸します。1945年5月ドイツ降伏。8月日本降伏。戦死者は、軍人2200万人〜2500万人、民間3800万人〜5500万人、日本での戦死者は軍人200万人、民間50~100万人です。
ドイツはふたつの世界大戦で主役を演じています。フランスも受け身ではありましたが、ドイツと戦わざるを得ませんでした。欧州連合(EU)はそこから生まれています。ドイツを統合の枠内収め、英独仏の3大国と中小国がバランスをとって、欧州連合の加盟国の拡大と統治を進め、平和と安定を願う(日経社説7/26)
。ところが、ギリシャ危機の今回明らかになったのは、ドイツ帝国の再び誕生していることでした。
3、ドイツ帝国
『「ドイツ帝国」が世界を破滅させる』(エマニュエル・トッド 堀茂樹訳 文春新書)がベストセラーになっています。著者のトッド氏はフランス知識人独特のエスプリとユーモアで警告を発しています。
まずトッド氏は、現在のヨーロッパの権力構造を図式化して示します。ピラミッドの頂点にあるのはドイツ経営者団体→メルケル(ヨーロッパ保護領管理担当)→欧州中央銀行→フランスの諸銀行→フランス経済財務大臣→フランソワ・オランド大統領の役割は無し(前掲書p.141)。ハッハッハ!?
つぎに衝撃的なヨーロッパ地図を掲載しています。ドイツを中心に、ドイツ圏はベルギー、オランダ、スイス、オーストリア、チェコ。自主的隷属国は、フランス。事実上の支配地はポルトガル、スペイン、イタリア、スロバキア、ルーマニア、ギリシャ。ヨーロッパはすでにドイツのものです。
さらにトッド氏はロシアの「天然ガス・パイプライン」がウクライナを通りドイツを終点にしている事実を指摘します。ロシアとドイツの関係は謎です。メルケル首相は、東独出身でロシア語を操り、ひとりでモスクワを往復しています。トッド氏はドイツが隣国に何の相談もなし、原発廃絶を決めたことに疑義を呈しています。
ドイツとは哲学者カント、文学者ゲーテ、音楽家バッハです。しかし反対の顔があります。アイルトン・セナの活躍したいた頃のフランクフルト近郊のホッケンハイム・サーキットでその素顔を見ました。集まった入れ墨のマッチョな男たち。乗ってきたクルマはドイツ車にほど遠い改造車。彼らがヒットラーを支えた、何の脈絡もなくそんなことを想像し、背筋が寒くなったことを覚えています。