大量生産、大量消費の終わり、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの始

クリエーティブ・ビジネス塾32「デジタルマーケティング」(2018.8.6)塾長・大沢達男

大量生産、大量消費の終わり、ワン・トゥ・ワン・マーケティングの始まり。

1、大量消費時代
マーケティングとは市場(market)を動かす(ing)ことです。なぜ市場を動かすか。金儲けをする「商売」のためにです。「商売」とは「三方よし」です。店よし、客よし、世間よしです。
トヨタ創立の「産業報国」の精神からすれば、産業活動を通して祖国の発展に貢献することです。ユニクロの「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」からすれば、ファッションで世界に革命を起こすです。
マーケティングとは4P、Product(何を作り)、Price(いくらで)、Place(どこで)、Promotion(誰に売るか)です。Promotionのなかに、セグメンテーション(市場の細分化)、ターゲティング(標的市場の選択)、ポジショニング(競合商品との位置づけ)が、そして広告があります。
大量消費時代のマーケティングはおおらかでした。洗濯機、掃除機、冷蔵庫の時代、そしてクルマ、クーラー、カラーテレビの思い出せば明らかです。同じ商品を大量に作り、テレビを通じて大量に広告を打ち、商品は大量に売れる、大量生産・大量消費時代です。
2、アマゾン・ゴー
デジタル・マーケティングを実践する店舗として「アマゾン・ゴー」が2018年1月にオープンしました。EC(電子商取引)のアマゾンがついに、消費者データを集めるために、実店舗の経営に乗り出しました(「デジタル時代のマーケティング戦略」牧田幸裕 日経7/5~7/16)。
1)ノーライン、ノーチェクアウトです。レジがなく、レジ待ちの行列がありません。利用客は専用アプリをダウンロードしたスマートフォンを駅の自動改札のようなゲートにかざして入店し、欲しい商品を自分のバッグに要れ、そのままゲートから出れば買物の支払いは完了しています。
2)狙いは利便性だけではありません。「購買前行動データ」の蓄積です。店内の天井に設置された無数のカメラで客の行動データを蓄積しています。購買前に客は何と何を比較したかです。客によって違う競合をワン・ツゥ・ワン(1対1)で取得することが目的です。
3)さらには「購買前心理データ」の獲得も狙っています。客の表情認識で、商品を手にしたときに、プラスの感情を持ったかマイナスの感情を持ったか、をデータ化します。
「アマゾン・ゴー」で見られることが「デジタル・マーケティング」で、その要点は以下の3つです。
1)「ワン・トゥ・ワン・マーケティング」。セグメンテーションとターゲティングの進化です。個人個人の購買行動を把握して対応するマーケティングです。
2)「データドリブン」。消費者理解を勘や経験ではなく、データに基づいて行います。
3)「次世代チャンネル」。実店舗でもEC(電子商取引)と同じような購買体験が可能で、消費者の購買データ取得の場にします。
「デジタル・マーケティング」の目的は、消費者行動データの分析でお客さまを理解しよい提案をし、競合企業と差別化し、お客さまから信頼を獲得することにあります。
3、ゾゾスーツ
「ゾゾスーツ」をご存知ですか。水玉模様の採寸用のボディースーツです。無料配布されています。私たちは自宅でボディスーツを着てスマートフォンのカメラで撮影すれば採寸されます。採寸データは衣料品通販サイト「ゾゾタウン」で管理され、最適サイズのファッションが検索できるようになります。
またユニクロでは電子商取引(EC)の比率を現在の7%から30%に引き上げる目標を掲げています。実店舗の機能は採寸と試着になります。採寸データの蓄積は、購買前行動データの蓄積と同じです。消費者に最適の提案ができます。着ればジャストサイズ。店舗数は減り、在庫も減少します。
さらにレナウンは「シェア・エコノミー」に針路をとっています。「服は買うから利用する時代になる」。衣料品のレンタルサービス「着ルダケ」です。たとえば月額4800円の6ヶ月契約だと、春夏物と秋冬物のそれぞれ2着のスーツを利用できます。貸し出されるスーツは1着6万円。4着購入だと24万円、それを年間6万円で利用できることになります。
商売(ビジネス)を前進させ大きくするものは、イノベーションマーケティングです。デジタル・マーケティングは、ビジネスを革新するでしょうか。あくまでも補助手段です。新しい商品は消費者データから生まれません。マーケティングから小説や映画が生まれないのと同じです。発明のみが新しい商売を生みます。