アベノミクスは評価すべきです。

クリエーティブ・ビジネス塾50「アベノミクス」(2017.12.11)塾長・大沢達男

アベノミクスを評価すべき、そしてアベノミクスの第2ステージに望まれること。

1、デール・ジョルゲンソン ハバード大学教授(日経11/30)
まず首相と内閣府に呼ばれ、政策が採用された外国人経済学者の意見を紹介します。
アベノミクスは「三本の矢」として、2012年12月にスタートしています。第1の矢は大胆な金融政策、第2の矢は機動的な財政政策、第3の矢は民間投資を喚起する成長戦略です。
ジョルゲンソン教授は第1ステージのアベノミクスの成果を踏まえ、第2にステージへの提言をしました。
それは、生産性の向上を通じての日本経済の最活性化です。教授は生産性向上に努力すべき分野として非製造業を挙げました。非製造業とは、農林水産業、電力・ガス、金融・保険、その他サービス、卸売り・小売りなどです。これらの部門は国際競争から遮断されています。日米間の生産性格差で最も大きいのは卸売り・小売りの部門で、国内市場志向の5部門が米国の生産性に近づけば、両国の生産性格差はほとんど解消されると、教授は提言しました。
2017年6月に「未来投資戦略2017」が閣議決定されました。このアベノミクス第2ステージでは、第1に生産性の向上、第2にイノベーションと貿易の促進、第3に企業活動の活性化を重点項目に挙げています。
そして首相官邸は第2ステージのアベノミクスの概要と重点項目への詳しい説明を発表しました。
まず、生産性向上のための働き方改革正規雇用と非正規雇用の問題です。人材の硬直的な雇用保護で、非正規雇用労働者が犠牲になっています。正規は男性、非正規は女性です。
つぎに、イノベーションと貿易の促進では、1)卸売り・小売り部門の輸送・流通の高速化、2)建設部門のインフラ事業の生産性向上、3)金融・保険部門でのイノベーション、4)パーソナライズ(個人化)医療の実現。
さらに、企業活動活性化のために、消費税増税法人税減税。外国からの直接投資で、生産性向上につなげます。
教授は、日本の基本的な問題として、1)生産性が伸びない、2)労働人口の減少、3)人口の高齢化をあげ、そしてこれらの課題に、アベノミクス第2ステージは、答えていると評価しています。
2、吉川洋立正大学教授、山口広秀日興リサーチセンター理事長(日経12/1)
つぎはアベノミクスを批判する意見です。
吉川・山口氏はまず、日本経済は2012年の11月の「谷」から60ヵ月の景気拡張を続けて、長さだけでは1960年代に57ヵ月続いた「いざなぎ景気」を抜いたことになるが、好況感は生まれていない、アベノミクスへの期待も色あせている、と先制パンチをくらわします。
1ドル=85円の円高と株価上昇は、アベノミクスによるものではなく、米金融当局と動きと外国人の株の買い越しによってもたらされたものである。安倍政権下の13〜16年の平均成長率1.1%は、リーマンショック以前の00~07年の平均1.5%より低い。なぜ成長率が高まらないかは、家計消費が低迷しているからで、これが日本経済の大きな問題であると、吉川・山口氏は主張します。
消費低迷の第1の原因は、賃金の伸びが弱いこと、「賃金デフレ」です。第2は「将来不安」です。老後の生活設計と自分の健康不安です。そして第3は「予備的な動機」の貯蓄です。見逃せないのは若年世帯の消費性向が下落していることです。年金などの社会保障制度の持続性に疑念が広がっています。
そして吉川・山口氏は、消費主導の安定的な経済成長を実現するために、財政と社会保障の将来像を明確にせよと、結びます。
3、本田佑三関西大学教授(日経12/4)
本田教授はアベノミクスを評価しています。
まず失業率、2012年12月の4.3%から17年10月の2.8%へ、5年間に着実の改善され、そして生産も期間中増加基調が維持されています。
本田教授が最も評価するのは、日本経済が2度の渡り危機を迎えたときです。1度目は14年4月の5%→8%への消費税率の引き上げ、2度目は15年6月からの円高です。ともに日銀は、14年10月に追加の金融緩和を実施、16年1月マイナス金利政策を導入し、危機を乗り切ることに成功しています。
問題は目標のインフレ率2%です。消費者物価の前年比上昇率は0.8%にとどまり、2%のインフレ率は簡単に達成できそうもない。では数値を下げるべきか。それは望ましくない。米国の目標値が2%である限り日本も2%でいい。
本田教授の結論は、FRBと米経済から目を離すな、です。現在の株価上昇は速すぎる、いずれ調整局面を迎える。08年のリーマンショックは米国発、15年の人民元急落もFBRの金融引き締めへの転換が原因だからです。
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アベノミクスは○か×か。○です。失業率が改善されています。景気は緩やかであるが拡大しています。人々は落ち着いて生産活動の従事しています。そして日本経済は米国経済と一心同体です。リスクをうまく回避してきた、黒田日銀総裁にエールを送ります。
問題は生産性の向上。最大の未来の不安は、日本から働く人がいなくなることです。どんな改革をしても追いつきません。人口増のための抜本的な国づくりが必要です。でないと日本は人口減で30世紀に滅びます。