クリエーティブ・ビジネス塾41「イスラム国」(2014.10.8)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、英国人殺害
「イスラム国」は9月13日に、英国人デービッド・ヘインズ氏(44)とされる男性の首を切断して殺害する映像をインターネット上に公開しました(日経9/15)。欧米人の殺害映像は、米国人2人に続き3人目、米英は強く反発、イスラム国への対抗姿勢を強めています。
1)「イスラム国」(Islamic State , アイシス=ISIS=Islamic State of Iraq and Syria)とは何でしょう。イスラム過激派です。イラク、シリアにかけて支配地域を拡大しています。2001年に米国で同時多発テロを起こしたウサマ・ビンラディンの国際テロ組織「アルカイダ」は反米テロネットワークでした。それと違い「イスラム国」は国家の樹立を宣言しています。
2)かつてイスラム国家は「オスマン帝国」(1299~1922)として存在しましたが、第1次大戦後のトルコ革命によって崩壊します。フランスと英国は、オスマン帝国が崩壊したら領土を山分けする「サイクス・ピコ協定」を結んでいました。そしてイラクは英国、シリアはフランスのものに。一直線のイラクとシリアの国境線がそのことを証明しています。「イスラム国」は国土を返せと主張しています。
3)「イスラム国」の指導者はカリフです。預言者ムハムンドの後継者です。イスラム教徒であれば、無条件に従わなくてはならない存在です。「イスラム国」は世界のイスラム教徒に向かって命令を下しています(「池上彰の大岡山通信」日経9/8)。
2、地政学的リスク
政治現象と地域的条件の関係を研究する学問を地政学といいます。「イスラム国」の問題は、地政学的リスクとして、さまざまな説明がされています。
1)国連・・・「国連安全保障理事会は重要な問題について絶望的に機能していない」(チャールズ・キング ジョージタウン大学教授 日経9/10)。国際平和と安全維持の国連の理念は崩壊しています。そもそも安全保障理事会の常任国であるロシアと中国が、率先して国境線を強制的に変更する当事国になっています(星野俊也 大阪大学副学長 日経9/11)。ロシアはウクライナを分断しています。中国は東シナ海、南シナ海へ海洋進出しています。第2次大戦後の世界平和を守ると信じれてきた国連の夢は、終わりつつあります。
2)欧米の自由主義モデル・・・かつて世界は、自由主義、民主主義の勝利で、「歴史の終わり」と宣言されました。ところが歴史は終わっていませんでした。国家主義や社会保守主義の国家モデルの、ロシア、中国、ナイジェリア、北朝鮮が、新たに登場してきました。欧米が理想とする、寛容や多文化主義は退廃的で弱腰だと、批判されます(前掲キング教授)。歴史は逆に、自由主義の終わり、の様相すら呈しています。
3)中間層・・・もうひとつは、新たに力を持つようになった中間層です。スマートフォンやソーシャルメディアを手に連帯しメッセージを発信(前掲星野副学長)する、彼らの価値観が伝統的なエリート層の特権的な地位を脅かしています。米国共和党ティーパーティー運動、タイの赤シャツ隊(反独裁民主前線)です(前出キング教授)。
3、イスラム教
「あなたはわたしのほかに、なにものをも神としてはならない」(旧約聖書 出エジプト記 第20章)。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教は、すべて旧約聖書を聖典にしています。一神教はひとつの神の絶対的正義を信じます。妨げるものは悪魔です。対立します。キリスト教徒は22億人。イスラム教徒の16億人は2030年までに20億人にふえます。
イスラム国の部隊は、想定されていた3万1500人より大幅に上回ると修正されています(日経9/15)。イスラム国はSNSなどネットを巧みに使い戦闘員を集めています。欧米の若者たちも参加していて、日本の大学生からの参加者も現れています(日経10/7)。
キリスト(前4~後28)が誕生して2010年。マホメッド(570頃~632)のイスラム元年は622年。以来キリスト教徒とイスラム教の争いは続いています。紛争は始まったばかりか、終わりに近いのか。先日の9月11日で、2001年に3000人が犠牲になった米同時多発テロから、13年が経ちました。