クリエーティブ・ビジネス塾25「FIFA」(2015.6.17)塾長・大沢達男
1)1週間の出来事から気になる話題を取り上げました。2)新しい仕事へのヒントがあります。3)就活の武器になります。4)知らず知らずに創る力が生まれます。5)ご意見とご質問を歓迎します。
1、ブラッター会長辞任
FIFA(国際サッカー連盟)のブラッター会長が、6月2日に辞任を発表しました。5月29日のFIFAの総会で5選されたばかり、なのにです。理由は、FIFAの幹部のフィゲレド副会長ら14人が米国とスイスの司法当局に賄賂により逮捕、起訴され、ブラッター会長にまで司直の手が及ぶことが予想されるからです。賄賂の額は24年間で1億5000万ドル(約185億円)に上るといいます(日経5/29)。
なぜFIFAで賄賂が横行するのか。理由は簡単です。ワールドカップ(W杯)の開催地がFIFAの理事25人(現在は26人)の投票で決まるからです。日韓同時開催になった2002年のワールドカップ招致キャッペーンの企画会議に参加したことがあります。「あれこれ余分なことを考えずに招致予算のなかから、まず理事ひとりひとりに1億円を配ろう!」「招致キャンペーンは余った金で十分だ」。もちろん冗談ですが。それは正義を度外視すれば、実現可能で有効な提案でした。
いま問題のなっているのは、18年のロシア大会、22年のカタール大会です。スキャンダルの今後の展開次第により、開催地が見直されることもありえます。
サッカーは巨大ビジネスです。たとえば2011年からブラジル大会が開かれた14年までのFIFAの収入は約57億ドル(約7100億円)、W杯自体は40億ドル(約5000億円)以上の売上げを誇る単一競技で世界最大のスポーツイベントです(日経6/5)。まあ簡単に言えば、25人の理事により、1兆円ビジネスの重要決定が行われています。賄賂の横行する可能性は十分すぎるほどのありました。
2、FIFA
FIFA(Federation Internationale de Football Association)は、1904年5月21日パリで、オランダ、スイス、スウェーデン、スペイン、ドイツ、デンマーク、ベルギー、フランスの8カ国で結成されます。
FIFAは、その誕生からして歪んだ組織です。まずイギリスが、FIFAより先の1882年に国際サッカー評議会を、イングランド、スコットランド、ウエールズ、北アイルランドで結成しました。サッカーの本場はイギリス。イギリスの4つの地域は1905年にFIFAに加盟します。そのことにより、FIFAはイギリスの国際サッカー評議会のサッカーのルールに従うことになります。さらにFIFAは8人いる副会長のひとりはイギリスから選ぶことを決めます。
日本は1929年にFIFAに加盟、しかし1968年のメキシコ五輪で銅メダルの獲得はあるものの、日本のサッカーの歴史は日本サッカープロリーグ(Jリーグ)が結成された1993年から始まるといってよいでしょう。日本はまだ22歳の若者です。
サッカーはイギリスのもの、そしてヨーロッパと南米のもの、それにアジアとアフリカが参加した歴史を持っています。アジア・アフリカを仲間にしたのが、ジョアン・アベランジェFIFA会長(1974~1998)、そしてそれを引き継いだのがヨーゼフ・バラッター会長(1998~2015)です。ブラッター会長を誕生させたのはアフリカ票、2010年南アフリカ大会を取引に会長を選びました。
3、アディダス
歪んだFIFAは、目に見えます。W杯の公式ボールです。W杯では1970年からアディダスのボールが独占的に使われています。それどころかアディダスはFIFAとスポンサー契約を13年に、30年まで延期する契約を結んでいます。なんと60年間W杯はアディダスのボールを使う。あり得ない。
ドイツのアディダスとは1936年のベルリン・オリンピックで短距離の4冠王ジェシー・オーエンスにスパイクシューズを履かせたアドルフ・ダスラーのことです。アドルフの愛称・アディ+ダスラー=アディダスです。大会のたびごとに世界で1000万個の公式ボールを販売するW杯は、アディダスのためのスポーツイベントです(ちなみにプーマはアドルフ・ダスラーの兄弟が始めた会社)。
謎が解けてきます。FIFAの汚職をなぜ米司法局が捜査するのでしょうか。それは不法行為により「米国のスポーツ関連企業が被害を受けた」(日経6/2)からです。米国のスポーツ関連企業とは、ナイキです。ナイキは1994年のW杯米国大会から本格的にサッカーに参入しています。そしていまではプラジル、オランダ、フランス代表に用品供給をしてます。しかし肝心のボールを扱えない。米企業にはとってアディダスはなんとも目障りな存在でした。いよいよサッカーでもナイキ、そしてアンダーアマーの時代が始まります。