リシャール・ミルを誰が買うのか?

クリエーティブ・ビジネス塾38「リシャール・ミル」(2017.9.18)塾長・大沢達男

リシャール・ミルを誰が買うのか?」

1、宮里優作
2017年5月のことです。日本の男子ゴルフツアーの「中日クラウンズ」で宮里優作選手が優勝しました。翌日、日経に全ページの広告が掲載されました。
リシャール・ミルと分かつ、最高の時。 宮里優作選手、リシャール・ミルと共にツアー通算4勝目を奪取。」
(日経5/15)。なんの広告か、わからないまま、宮里選手おめでとう。ヘエー!って思ってました。
ところが、翌週また同じような広告が日経に載りました。
「2大会連続の感動。歓喜を引き寄せる、リシャール・ミル宮里優作選手、リシャール・ミルと共に2大会連続優勝の快挙。」「宮里優作選手 着用モデル 12,000,000円(税別)」(日経5/23)。
今度は時計の広告だと分かりました。
試しに中日クラウンズの時の紙面を見ると、
宮里優作選手 着用モデル 15,984,000円(税別)」となっていました。
より高額の方は赤い時計、1200万円の方は白い時計でした。
リシャール・ミル」って、なーに?リシャール・ミルを知ったのは、その時です。
2、リシャール・ミル(Richard Mille)
リシャール・ミル」は、リシャール・ミル(1951年生まれ)によって2001年に創立された、スイスの高級腕時計のブランドです。設計コンセプトは、「腕時計のF1」(A RACING MACHINE ON THE WRIST)。軽量で極限状況でも使用可能な機械式腕時計です。価格は数百万円から一千万円以上。加工が難しいチタンなどの特殊な部品を多用しています。「機械式腕時計」というのが魅力です。
つぎにリシャール・ミルに出会えたのは、幻冬社の雑誌「GOETHE(ゲーテ)8月号です。
リシャール・ミルの腕時計のケースを作る「プロアート プロトタイプス」という、スイスの現地の工場を訪問した記事が掲載されていました。驚いたのは、ニューモデル紹介の囲み記事です。
テニスプレーヤー、ラファエル・ナダルとの共同開発の最新作は、89,000,OOO円(予価)。
何じゃラホイ??そして雑誌の記事は、これはむしろ安い、と解説していました。
カルティエ160万円 ○ウブロ300万円 ○エルメス407万円 ○ピアジェ302.5万円 ○フランクミュラー405万円 ○シャネル695万円 ○ブルガリ144万円 ○タグホイヤー66.5万円
この価格差を見ると、リシャール・ミルの高価格は段違いです。
3、渋谷西武
リシャール・ミルとの三度目の出会いは、日経に「西武渋谷店B館8階 リシャール・ミル サロン 2017.9.15(金) グランド・オープン」の広告が載ったのは、9月14日です。
オープニングの日と1週間後、二度行きました。
手袋をはめた店員におつけになりますか、誘われました。でも・・・断りました(内気になってしまいました)。買うわけない、買えないからです。そしてあれこれ雑談をして誤摩化しました。
ガラスケースの中に、一つ一つの時計が展示されています。10数個あったでしょうか。
驚いたことに、二つの時計が売約済みになっていました。
「どなたがお求めになるのですか?これってフェラーリ一台分ですよね?」
店員は言葉を濁しました。
地上げ屋(古い)、IT長者、株取引、遺産相続・・・。だれが買うのでしょうか。
平成の日本は、勝ち組の富裕層と負け組の貧民層に二極化しています。
雑誌「ゲーテ」は、高級腕時計、別荘、秘書、ファッション・・・と、富裕層をターゲットにしています。新しく始まった日経朝刊の連載小説「愉楽(ゆらく=たのしみ)にて」(林真理子作)もそうです。老舗の企業家の息子が性をエンジョイ(愉楽)する、富裕層の男女の禁じられた遊びがテーマです。
リシャール・ミルは、平成の日本を象徴する高級品になるのでしょう。爛熟、熟成、繁栄、富裕の象徴です(そしてそこには、腐敗、崩壊、衰退、敗北が待っている)。唯一の救いはリシャール・ミルがスポーツ選手をテーマにしていること、下っ腹の出た金持ちオヤジに、リシャール・ミルは似合わない。
宮里選手、時計に負けないように。12月のゴルフ日本シリーズ(読売CC)には応援に行きます。