ウクライナへの「反撃」で勝利し、プーチンはシャンパンで祝杯をあげる!?

THE TED TIMES 2022-09「ウクライナ」 3/15 編集長 大沢達男

 

ウクライナへの「反撃」で勝利し、プーチンシャンパンで祝杯をあげる!?

 

1、プーチン

ウクライナに「侵攻」したプーチンは、頭がおかしいのでしょうか。

モスクワで大学院を終え、国際協力銀行モスクワ事務所に勤務し、現在、笹川平和財団研究員の畔蒜泰助(あびるたいすけ)は、言下に否定します。

「独語ができる、英語も読める。情報を理解・整理する能力がずば抜けています。(中略)世界の指導者でも議論して渡り合うのはなかなかしんどいとおもいます」(畔蒜泰助「プーチンの野望」 p.115 『文藝春秋』2022.4)。

ロシア問題でナンバーワンの佐藤優も否定します。

「『プーチンは精神に変調をきたしている』というアメリカの報道がありました。これも情報戦で負けていることの表れです。相手の内在的論理がわからず「精神状態が異常だから」と結論づけてしまっては、うまく噛み合う対抗手段もわからないからです」(佐藤優 PRESIDENT Online)。

さらにそのプーチンはロシア国内で孤立していません。

クレムリンが一枚岩であるだけでなく、広範な知識人や国民の多数もプーチンを支持し、結集してきています。『ソ連崩壊からいままで30年間、よくも俺たちをコケにしやがったな』という憤懣が、一気に噴出しているようです」(佐藤優PRESIDENT Online)。つまり「侵攻」ではなく「反撃」なのです。

2、ロシア、ウクライナNATO

ロシア史は、9世紀後半に始まり13世紀にモンゴルに滅ぼされる「キエフ公国」から始まり、それが13世紀に始まるモスクワ公国に引き継がれ、1721年にロシア帝国になります。

ロシア人、ウクライナ人、ベラルーシ人は「スラブ3兄弟」です(東郷和彦 『文藝春秋』 p.116 )。

プーチンの怒りは「ベルリンの壁」崩壊から始まります。

1990年ドイツ統一のときに米欧は軍事同盟・NATO北大西洋条約機構 1949)を東方拡大しない、とロシアに(口=くち)約束をします。

ところがNATOは1999年にポーランドハンガリーチェコを、そして2004年にルーマニアスロベニア、バルト3国、ブルガリアスロバキアを加盟させ、さらに2008年にジョージア(グルジア)、ウクライナを加盟目標に掲げます。

ロシアは「レッドライン(越えてはならない一線)だ」と反発、「両国の加盟はロシアに対する直接的な脅威」と強く抗議します(東郷和彦 『文藝春秋』 p.113 )。プーチンは2021年12月に「ひどく騙された」と積年の恨みを口にします(日経2/16)。

3、リベラリズム帝国主義

NATOとは、1949年に設立されたソ連を中心とする共産圏に対抗するための西側の軍事同盟で、基本的人権、民主主義、世界平和が正しいとする「リベラリズム帝国主義」です。

「リベラルな構造の擁護者の間に論争はあるが、ある1つの帝国主義的ビジョンを支持するという点で一致団結している。つまり、擁護者たちはリベラルな諸原理が普遍法として成文化され、必要とあらば武力でネイション群に課せられる世界を見たいと願っているのだ。このビジョンこそが世界に平和と繁栄をもたらすものだという点で、彼らは一致している」(『ナショナリズムの美徳』 p.64 ヨラム・ハゾニー 庭田よう子訳 東洋経済)。

NATOに影響力がある「フィナンシャル・タイムズ」は、「西側の衰退」を信ずるプーチンの間違いを指摘しますが(前編集長のライオネル・バーバー 日経2/26)、現実には、米国前大統領のトランプはNATOはいらないと主張し英国首相のジョンソンはEUを否定し、リベラリズム帝国主義は内部崩壊を始めています。

「権力を長く持つとリスクを取りたくなるのではないか」とのフィナンシャル・タイムズの質問に対してプーチンは、「ロシアには『リスクを取らない者はジャンパンを飲むことができない』ということわざがあるが、いまはそのことわざを使う段階ではないと、答えました。

それは、2019年夏のことです。しかし今、2022年2月にリスクを取る時がやってきました。

映画「007」で主役を演ずるダニエル・グレイグにそっくりのプーチンは、映画のように今回の「反撃」で勝利し、シャンパンを飲むことになるのでしょうか。