THE TED TIMES 2023-19「林舞輝」 5/17 編集長 大沢達男
サッカーの新しい常識「戦術的ピリオダイゼーション」と「構造化トレーニング(バルセロナ構造主義)」を、『「サッカー」とは何か』(林舞輝著 ソル・メディア)から学ぶ。
1、戦術的ピリオダイゼーション
ピリオダイゼーション(Peoriodisation)とは、Period(期間)の動詞Periodise(期間に分ける)を、再び名詞Periodisation(期間分け)にしたものです。
戦術的ピリオダイゼーションは、ヴィットール・フラーデに提唱され、ジョゼ・モウリーニョのより具現されたサッカーのトレーニング理論です。
期分けとは、試合と試合の間の1週間の期間に、どんなトレーニング・練習をするか、シーズンの始まりから終わりまで、終わりから始まりまで期間に、どんなトレーニング・練習をするかです。
戦術的とはチームの意思決定、ピリオダイゼーションとは期分けがもたらすチームのベストコンディション、このふたつ融合が戦術的ピリオダイゼーションです。
○ゲーム・モデル(理想のサッカー、自分たちのサッカー)は、国柄、チームの文化と歴史、構成される選手、システム・フォーメイション、目的は優勝か、残留か、などによって決定されます。
○それを支えるのがプレー原則は、攻撃、守備、ネガトラ(ネガティブ・トランジッション=攻撃→守備への切替)、ポジトラ(ポジティブ・トランジッション=守備→攻撃への切替)の4つの局面で決定されます。
○戦術的な選手とは、チームのゲーム・モデルに適応し、プレー原則を理解し、それに沿ったプレーを選択・判断できる選手ということなります。
なにをトレーニングするか。
○戦術的疲労とは、頭の疲労+メンタルな疲労。サッカーの疲労とは、肉体の疲労ではなく、中枢神経系の疲労です。つまり休ませる必要があります。
○サッカーには組織が不可欠。フィジカル面が過剰に評価されています。
○筋肉の動かし方には、ストレングス(tention)、持久力(持続性=duration)、パワー(速さ=velocity)があります。
日曜日に試合があれば、水曜日がテンション、木曜日が持続性、金曜日が日になり、それぞれの日にフィジカル的にどのような負荷をかけるかが問題になります。
日=試合、月=オフ、火=リカバリー、水=テンション、木=持続性、金=速さ、土=リカバリー、日=試合になります。
構造化トレーニングとは、フランシスコ(パコ)・セイロールによって開発された、サッカーの革命的なトレーニング方法です。
パコは、陸上競技のコーチでした。サッカーの世界に来て驚きます。
チーム競技なのに個人競技と同じ練習をしていたいる。トラックをランニング、ジャンプとステップ、そしてスプリントの繰り返し。これはおかしい。
そこでパコはチームスポーツにおけるトレーニング理論とトレーニング・メソッドの研究を始めます。
○まず理論。近代科学(デカルト主義)は要素の総和=全体、全体=要素の総和、要素還元主義です。それに対立するのが構造主義。全体は要素の総和ではない、要素を合わせても全体にならない、という考え方です。
ダッシュ、ジョギング、クロスの練習をしてもサッカーはできません。アスリートを育てもサッカー選手は生まれません。
サッカーというチームスポーツでで重要なのは、相互作用、相互関係です。さらのプレーヤーの人間を形づくっているのも周りの人間との関係性です。
フィジカル面だけをサッカーと切り離して考えることはできません。
○個人の能力の構造は、8つから成り立ちます。生体エネルギー、コンディション、コーディション、認知、社会性、感情意欲、表現力、メンタル(自分の能力を統合させる能力)。
なかでもトレーンングで重要なのは、コンディション(フィジカル)、コーディネーション(テクニック)、認知(判断)です。
コンディションとは、ストレングス、エンデュランス(持久力)、スピード(パワー)。コーディネーションはドリブル、パス、シュートで。構造には運動のコントロール、空間での運動コントロール、時間把握能力の3段階があります。
認知は自分の外側の情報と自分の情報を集める能力で、一番重要視されるものです。
○結論。自己構造化のキーは反復練習ではありません。異なる経験、新しい経験で脳と体のシステムを発達させることです。
したがって、練習メニューは、独自、特化、個別、プロセスになります。
3、林舞輝( はやしまいき 1994年生まれ)
『「サッカー」とはなにか」を書いたのは25歳の若者です。日比谷高校からイギリス、ポルトガルでサッカーを学んだ天才コーチです。
林は、戦術的ピリオダイゼーションと構造化トレーニングにより、常識はくつがえさされ、革命が怒ったと証言します。
理論は、実践により証明され、チームに勝利をもたらしました。そして理論は、サッカーだけでなく、他のスポーツ、他の学問分野にも影響を与えています。
しかし林の感性はしなやか。自らが紹介した理論を盲目的に信じるなとアドバイスします。
巻末に書いてある、林の面白い話を紹介します。
1)まずチャールストンで、ヤバいものを観たという話。U-10の試合でも、タックル、タックル、タックルそして乱闘。労働者階級の町、ガラが悪い、口も悪い。そこから成り上がるためのサッカーです。プレミアリーグの選手が生まれます。
2)次はポルトガル人の国民性。イングランドは個人主義、ポルトガルはみんなが家族。試験の過去問をゲットしても、イングランドは仲間内だけ、ポルトガルはみんなー、ゲットしたぜーと、みんなでシェアー。東洋人が仲間外れにされることは全くない。
3)そして戦術的ピリオダイゼーションと構造化トレーニング。どちらが正しいなんてことはない。それぞれが「like」を作ればいいのであって、と柳に風。
いいですね。